落水と転覆のメカニズム:岩編

パックラフト入門

尻別川夏コースのダウンリバーで発生する落水・転覆のほとんどは、岩への衝突が原因になっている。すべての岩をかわすのは難しいが、岩に衝突した際の対処方法さえ知っておけば、ほとんどの落水・転覆は回避できる。

岩と岩の間を通るコツ

たった一つの岩であれば「岩をかわす」感覚で容易にかわせるかもしれないが、岩が二つ並んでいる場合には、両方の「岩をかわす」感覚ではなく、片方の「岩に近づける」感覚が必要になってくる。 

岩が横に並んでいる場合

下図のような素直な流れの中であれば、このまま真ん中をキープしていたらAとBの間を通過できるだろう。

では、次のような流れの中ではどうだろう?矢印がなければ、このまま真っ直ぐ進めば岩の間を通過できそうに見えるかもしれない。しかし、実際はカーブの前半で全ての流れがAの方角に向かっているため、Aに衝突するだろう。ここですべきことは、AとBの間を狙うことではなく、Aを無視してBを狙うこと。Bにぶつけるくらいの気持ちで漕ぐことだ。

岩が縦に並んでいる場合

下図のように岩が前後に配置されている場合に、中央からアプローチしてしまうと、Aをかわす際左岸向きに漕がねばならず、AをかわせたとしてもBはかわせないだろう。こういった場合は左岸からアプローチし、Aの下流側にあるエディーを利用する。エディーに入ってしまえばパックラフトはスローダウンし、余裕を持ってBをかわすことができるだろう。

もう一つ、岩をかわすコツのようなものがある。衝突したくない岩を見ないこと。見てしまうと知らず知らずそちらに吸い込まれてしまいがちだ。

岩に当たってしまった場合の対処法

通常、川の中にある岩に上流から流れてきた水が当たると、岩の正面に、クッションウェーブとかピローウェーブと呼ばれる水の盛り上がりが発生する。これを理解し対処することができれば、ほとんどの落水や転覆は回避できる。

岩に衝突するとどうなるか

正面からの衝突ならば、そのまま跳ね返ることが多いが、横向きで衝突した場合は、何の対処もしなければ落水・転覆するだろう。

横向きでクッションウェーブに乗り上げると、パックラフトは上流側に傾く。上流側のチューブは上流からの水の流れで水没し、落水・転覆につながる。

対処法

岩がらみの落水・転覆の多くは、パックラフトが横向きでクッションウェーブに乗り上げ、上流側に傾いた状態で岩に衝突することで起こる。これを回避するにはハイサイド(高い方への重心移動)というテクニックが有効だ。クッションウェーブに乗り上げる瞬間、下流側へ重心移動して上流側に傾くのを防ぎ、岩に寄りかかるような形で下流側重心をキープし、手で岩を押しながら岩から離れる。