再乗艇への3ステップ

packraft パックラフト入門

パックラフトの登場でダウンリバー(急流下り)のハードルは大きく下がった。その軽さやコンパクトさに注目されがちだが、パックラフトはこれまでダウンリバーの主役だったカヤックに比べると、操作が簡単で転覆しづらい。ここで注意してほしいのは、操作が簡単で転覆しづらかったとしても、操作を誤って転覆することはあるということ。これを想定せずにダウンリバーデビューしてしまっている人は意外に多い。

再乗艇とは

パックラフトに落水や転覆はつきものだ、という心構えで川に臨んでほしい。転覆した場合は、パックラフトをバレーボールのトスの要領で元に戻し、再び乗り込む。下流に穏やかな浅瀬があれば、パックラフトをビート板がわりにバタ足で泳ぎつけ、浅瀬に立って再び乗り込むことができる。では、もしその転覆が渓谷の中で起こったらどうだろうか?待てども待てども穏やかな浅瀬はやって来ないかもしれない。

パックラフトに再び乗りこむ行為を再乗艇というが、深い流れの中での再乗艇、これがなかなか難しい。

再乗艇はなぜ難しいか

パックラフトの再乗艇が難しい理由は外側のチューブ径が大きいこと、パックラフト自体の重量が軽いこと、ライフジャケットの全面の膨らみが邪魔になることが主な理由だが、これらを理解した上でコツを掴めば、足の届かない深い流れの中でも再乗艇ができるようになる。

再乗艇手順

再乗艇は、パックラフトの外側のチューブに手をかけるところから始まるが、チューブを手がかりに自分がパックラフトの上に「登る」というイメージでは上手くいかない。チューブを沈めてパックラフトを自分の下に「滑り込ませる」というイメージが大切。

準備

まずはパドルをパックラフトにのせる。焦って投げ入れたりすると向こう側に飛んで落ちてしまいがちなので、ここは丁寧に。再乗艇の最中もパドルが落ちないよう気を付けること。

再乗艇への3ステップ

STEP 1

手前のチューブにつかまりバタ足姿勢をとる。

STEP 2

ドルフィンキックと同時に手前のチューブを押し沈めて腹の下に滑り込ませる。

STEP 3

さらにドルフィンキックを繰り返し手前のチューブをヒザのあたりまでスライドさせる。

仕上げ

あとはうつ伏せの体を反転させながらお尻をシート位置へスライドさせる。パドルを握って両足を定位置に戻したら再乗艇完了となる。

再乗艇ができない場合

再乗艇はなかなか難しい。フラットウォーター(静水域)で出来ても、ホワイトウォーター(流水域)で出来なくては意味がない。岩がらみの瀬の中ならば速やかな再乗艇が必要で、時間がかかればかかるほど体力は消耗し、リスクは大きくなる。

仲間が一緒ならば、自分の反対側に回って奥のチューブを保持してもらう事で、再乗艇が可能になるかもしれない。それでも出来ない場合は、奥から手を差し伸べてもらうか、あるいはまた別の仲間に下半身を持ち上げてもらうしかない。

練習を繰り返し、どんな状況でも再乗艇が出来るようになるまでは、熟練者の同行なしで急流を下ってはならない。多くの事故はこの認識の甘さが原因で起きている。

川読みには時間がかかる。川の水位も一定ではない。昨日かわせた岩を今日かわせるとは限らない。軽く岩に当たっただけのつもりでも、対処法を知らないと簡単に転覆する。大事なのは転覆に備えておくことだ。